「誕生日プレゼント」

「あれが私の友達のポチよ」
「ね、ちっちゃくって可愛いでしょ!?」
「凄く大きな犬のお家に住んでるお嬢様なの!」

「あぁ・・・確かに可愛いんだけど、お前は何でそこに身を隠してるんだ?」
「仲のいい友達だったんじゃないのか!?」
「確かにデカい犬小屋がアンバランスに見えるな」
「何なら俺が行って呼んでみようか・・・?」

「ダメよ!」
「彼女はまだ幼くて恥ずかしがり屋なんだからあなたが顔を見せたら怖がっちゃうじゃないの!?」

「そうなのかぁ・・・」
「それでお前はそこに隠れて何をするんだ?」

「決まってるじゃない」
「彼女との友達会話を楽しむのよ」
「あなたはそこに居て動かないでじっとしてるのよ!」

「何をするのか良くわからんが、ここに居るよ」

「お利口さんね」
「あとでご褒美にビスケットをあげるわ」

「お前、さっきもビスケットを俺にくれたがもしかして俺がそのご褒美ってのをメチャ喜んでると勘違いしてるんじゃないのか?」

「あら、だって喜んで食べてたじゃないの」
「ポチにあげるビスケットを分けてあげたのよ」

「何だと・・・あれはポチ用のビスケットなのか!?」
「お前が俺に渡したから食べてしまったじゃないか!」

「犬専用のビスケットだけど人が食べても平気よ」

「やっぱり犬専用のビスケットだったのか・・・」
「どうりで骨みたいな形のビスケットだと思ったよ!」
「カリカリ歯ごたえがあってカルシュームたっぷりって宣伝してるヤツだよな!?」

「あら、良く知ってるわね」
「あなたも買ってよく食べてるの?」

「買って食べるかいっ、そんなもん!」

「じゃあ試食出来て良かったじゃない」
「美味しそうに食べてたから今度、買ってみれば?」
「逞しい骨格を形成するらしいわよ」

「あぁ、心配してくれてありがとう・・・」
「その逞しい骨格ってのは他の食べ物で補給するよ」

「あなたと仲良く会話してたら楽しくてポチとの会話が出来なくなるでしょ?」
「これ、あげるから少し黙ってなさい」

「はいはい、追加のビスケットをありがとう・・・はは」

「ポチ・・・ポチ、聴こえる?」

「わん、わんっ」

「私の声が聴けて嬉しいみたいだわ」

「その割りには今の鳴き声で尻餅ついてんじゃねえか」
「もしかしてビビッてんのか?」

「ち、違うわよ!・・・態勢が崩れただけよ」
「大丈夫、あとはビスケットを投げてさよならの挨拶をすれば今日の友達会話は終わりよ」

「えらく遠くに投げたもんだな・・・」
「何で怖いのにそんだけお前は頑張ってるんだ?」

「私の誕生日プレゼントにお父さんが犬を買ってくれる約束をしたから慣れておく為よ!」

「そうなのかぁ・・・良かったな」

「友達を少しでも増やさなきゃ・・・」
「あなたがもしも居なくなったら私はまた独りぼっちになってしまうじゃないの!?」

「俺はお前の前から消えたりしないよ!」

「ホント?」

「あぁ、ずっと一緒に居るから寂しくなんてならないぞ」

「・・・ありがとう!」

「だから抱きつくなって言ってんだろ」
「家の人に見られたら何て弁解すりゃいいんだよ!」

「さっきからずっと見ておったが・・・羨ましいぞ」

「ゲェーッ!」

「ほのか・・・」
「ハヤト君のあと、子供の頃みたいに私にも抱きついてくれないか?」

「私はハヤトだけのモノなの・・・お父さんゴメンねっ」

「ゲッ、ゲーッ」

「ハヤト君、ほのかを奪いたいのなら私を倒してからにしなさい・・・はっはっは」

パァーン!
「ハヤト君、お茶でもいかが?」

「こんなとこにまでスリッパ持って来て殴ることはないだろう?・・・母さん、今のはかなりいい音がしたぞ」

「はぁー・・・」


ハヤトの試練はこれからも果てしなく続きそうである。